目次
最強な理由1 世界情勢の解像度が上がる
それでは、ここから「地政学が最強の教養である理由」を紹介していこう。結論からお伝えすると、理由は以下の4つである。
- 【最強な理由①】世界情勢の解像度が上がる
- 【最強な理由②】長期未来予測の頼もしいツールになる
- 【最強な理由③】”教養”が身につく
- 【最強な理由④】視座が変わる・相手の立場に立てる
地政学を学ぶと国際ニュースの解像度が上がる
ウクライナ戦争の行方、アメリカ中間選挙後のバイデン大統領の指導力、第20回中国共産党大会を経ての習近平氏の国家運営、北朝鮮による弾道ミサイル発射、世界的インフレ、米中新冷戦、台湾有事等々、SNSやテレビ、新聞で世界のニュースを見ない日はない。
地政学とは、価値判断をいったん横に置いて、科学的観察のアプローチで、地理的な条件に注目して、国の行動を予測する学問である。自然科学のように研究室で実験ができるものではなく、予測の難しい様々な人間の想いや周辺国の行動が介入してくる国家の外交的意思決定の動向を探るものなので、完璧な予測はできない。
しかし、各国の行動の一定の方向性を探るには有意義であると著者は思う。地政学は国際情勢の変化の原動力に迫る学びなので、国際情勢の変化がビジネスや社会や経済に大きなインパクトを与え続けるこれからの時代に不可欠と著者は考える。
地政学VS国際関係
ざっくり言えば、地政学の国際関係の背後にある中長期的な国の動きを読むアプローチと言っていい。それに対して、「国際関係論」や「国際関係分析」は短期の国同士の動きに注目するアプローチと言える。
国際関係論にはリーダーやその分析者の価値判断が入りがちだが、地政学は人間の価値判断から離れて自然現象に近い形で国と国との関係を、再現性を求めるような形で、検討するものだと著者は考える。
最強な理由2 長期未来予測の頼もしいツールになる
未来予測のためには不可欠な「地政学」
現在のような複雑な変化が連続する時代になると、将来への不安からか未来予測が人気を博す。実際、世界中で多くの未来予測書が出ていて、近年は特に、テクノロジーの最先端を追うことによる未来予測が人気のようだ。
しかし、あなたが未来予測の確実性をもっと高めて、この変化の激しい時代を生き残っていきたいのであれば、地政学の知見も欠かせない。
海外で起きることがあなたのビジネスにリアルにダメージを与える。日本で暮らしている人でも、日本はその資源のほとんどを輸入に頼っているので、今の世界的な食糧や燃料の高騰によって間接的にコストが増しているという人も多いのではないか。だからこそ、世界情勢を深く知り、その行く末を読み、危機を事前に回避することが重要だ。
ここで鍵を握るのが地政学の知見だ。世界情勢を大きく動かしているのは国のトップの言動であり、そんな「国のトップの思考法」をあなたの頭の中にインストールするのが地政学である。
そして、さらに重要な事実は、あなたが「自分の未来を変える」と考えているテクノロジーの行く末ですらも、「世界情勢」によって大きく左右されるということである。
であるからして、テクノロジーも重要であるが、本当に未来予測の確実性を高めたいのであれば、より根本にある「世界情勢」に目を向けることが必要だ。そして、そのために「地政学」が欠かせない。
最強な理由3 "教養"が身につく
地政学を知ることは、多様な学問を横断すること―経済学・哲学・歴史学・宗教学・文化人類学・政治学・地理学
地政学というと基本は「政治学+地理学」である。しかし、実際には、その2つに加えて、経済学、哲学、歴史学、宗教学、文化人類学などにもアプローチする必要がある。それらは「世界を正しく理解しようとすれば避けて通れない」からだ。
例えば、中国のことを理解しようと思ったら、以下のようなポイントも重要になってくる。
- 中国という国がどんな場所や環境にあるのか(地理学)。
- 中国の歴史はどうだったか(歴史学)。
- そういった環境や歴史によって、どんな社会を築いてきたのか(文化人類学)。
- 統治するためにどんな政治体制を敷いているのか(政治学)。
- 宗教をどう理解し、いかに対応してきたか(宗教学)。
- なぜ産業革命や資本主義に乗り遅れたのか、中央集権体制で資本主義をやって今後どうなるのか(経済学)。
最強な理由4 視座が変わる・相手の立場に立てる
「視座を変える力・相手の立場に立つ力」こそがビジネスの結果を決める
著者の言う地政学では、全地球的な視野で国々の動きを分析・推測していくことが求められる。地理をもとに、気候、歴史、宗教、民族、周辺国情勢など多様な切り口を入れて全体像を浮き彫りにしていく。
視座を変えるという意味では地政学の良さは相手の立場に立つ訓練にもなるという点だ。著者が最も重要なビジネススキルは何かと問われれば、真っ先に挙げるのはこの「相手の立場に立つ力」だ。