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【本要約】田村耕太郎【地政学が最強の教養である】第6章 未来の地政学 気候変動の地政学

目次

気候変動の地政学

地政学に大きな影響を与えるのは地理だけではない。「地理が変われば気候が変わる」と説いてきたが、地理が変わらなくても気候が変わる時代が来るからだ。それをもたらすのは「気候変動」だ。

 

その中でも両極の氷が溶ける影響ほど地政学インパクトがあるものはない。実は地球上に現在ある両極の氷の歴史は我々の想像以上に新しいのだ。

 

今の両極の氷ができたのは、恐竜の絶滅直後のことらしい。南極や北極が今の氷に覆われたのは46億年の地球の歴史上、3400万円前とかなり最近のことなのだ。

 

氷が溶けることによって起こること

北極海ルートの確立

何度かこの本で触れられてきたがこれは今の世界の海上交通路を書き換えるインパクトを持つ。現在でもこの北極海ルートは夏の2か月ほど通行できるようになっているが、今後の気候変動では通年で航行可能になる。北極海ルートは今の南回りのスエズ運河経由の欧州→東アジアルートに比べて30~40%短く、燃料を節約して環境負荷を軽減できる。天然のコールドチェーンなので薬品や食糧を運ぶには最適だ。

 

加えて、海賊の襲来がなく、政治的に不安定な中東を通らない。ロシアにとっては悪い話ではなく、北方領土の重要性は増す。東南アジアの物流ハブ・シンガポールには厳しい話だ。地球儀で見ればわかるが、北極海ルートのシンガポールのロケーションにあたるのは北海道の釧路近辺になる。釧路が栄えるかもしれない。

 

北極をめぐる資源争い

北極に眠る天然資源の埋蔵量は、世界における天然資源の22~25%と言われる。北極に関しては南極条約のような資源開発に関する包括的な取り決めが存在しない。なぜなら南極が「陸」であるのに対して、北極は「海」であるからだ。

 

地球温暖化の影響による氷(永久凍土)の溶解に伴い、こうしている間にも北極では資源開発が着々と進んでいる。しかし、北極海発が自由に行えるわけではなく、北極圏には、カナダ、デンマークノルウェーをはじめとした沿岸国によってすでに排他的経済水域EEZ)が設定されている。しかし、今の北極開発を主導しているのは主にロシア。ウクライナへの侵攻を見てもロシアが友好的に沿岸国と話し合って資源開発をするだろうか?

 

南極をめぐる資源争い

南極大陸は氷の重さで沈んでいる。これから南極の氷が溶けていけば、陸地が浮かび上がり、資源開発が容易になってくる。

 

地中レーダー探査、衛星画像などの技術により、氷の下の構造が明らかになり始めている。

 

南極に関しては、1959年に締結された南極条約によって、66度33分以南の土地に対する領土権はすべて凍結されている。つまり、南極大陸および周辺海域に眠る資源も"誰のものでもない状態"なのだ。少なくとも南極条約の効力が続く2048年までは、資源をめぐって争いが起こる可能性は低いが、その後はわからない。