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【本要約】田村耕太郎【地政学が最強の教養である】第6章 未来の地政学 地政学を乗り越えるには

目次

地政学を乗り越えるには

風水と地政学

これまで国家の運命がいかにいまだに地理によって規定されるか、様々な国々の事例を見てきた。人間は居場所によって影響を受ける。ミクロでその分析をする技術として中国で生まれた風水という技術がある。風水というと何かスピリチュアルな印象があるが、著者が住む世界最高のスマートシティ・シンガポールでは政府や民間が都市設計やビルのデザインに活かしている技術だ。

 

観光名所になっているマリーナベイサンズ。水は金運を表すといわれ、このホテルの屋上には57階建ての3つの棟を連結する形で巨大なインフィニティ・プールがある。このホテルが海とプールに挟まれ金運にあふれる設計になっている。

 

合理精神に基づく効率性追求を、アジアの中でも最も真摯に行なっている、政府や民間企業からなるシンガポールでも「居場所から来る運命」に働きかけようとしているのが興味深い。経済発展にとって、熱帯にあるのは不利とされ、かつて熱帯に位置して一人当たりGDPで世界トップ10に入る国家はなかった。しかし、このおかげもあってか、シンガポールは今や世界で1、2位を争う豊かさを誇っている。

 

国家の運命と個人の運命は同じではない

一方で、居場所から来る運命をマクロで見たのが「地政学」という概念だろう。冒頭で紹介したように、居場所が、気候、周辺国家、産業、食糧生産、統治体系などを規定するのだ。

 

国家は簡単には引っ越せないのだ。

 

ただ、著者がこの本で語っているのは国家の運命である。現代では、幸か不幸か、国家の運命=個人の運命、ではない。かつてはこの方程式から逃れることは難しかった。しかし今の時代は、生まれたり、国籍やパスポートで規定される国家を離れて多様な場所に暮らせる。