yagibrary

あだ名のやぎと図書館のlibraryを組み合わせてyagibraryです。本から学んだことをみなさんに紹介します。

【本要約】田村耕太郎【地政学が最強の教養である】第5章 その他の地政学 ヨーロッパ

目次

ヨーロッパの地政学

欧州で生まれた地政学は戦争の道具となる?

この本で紹介している地政学は、欧州で国民国家の誕生と時を同じくして生まれた。絶対王政を復活させたウィーン体制が、欧州各地で自由主義ナショナリズムを抑圧。この抑圧に対して、欧州各地で連鎖的に反乱が起こり、18世紀半ばにウィーン体制は崩壊。これにより欧州各国に国民国家が生まれた。

 

国家の住民を「国民」としてまとめ上げた国家が世界史上初めて次々と欧州で生まれた。そして国民としての意識を持たせるのに重要な役割を担ったのが民族である。

 

1904年、イギリスの地理学者・政治家であるハルフォード・マッキンダーは「ハートランド」の概念を唱えた。ドイツ地政学の中心人物となったのが、カール・ハウスホーファーである。前述のごとく、イギリス人であるマッキンダーは、ドイツやロシアを恐れて「ハートランド理論」を説いたが、ドイツ人地政学者のハウスホーファーはドイツとロシアの同盟を提唱した。

 

ハウスホーファーはのちにナチス・ドイツの最高幹部の一人となるルドルフ・ヘスと親交を深め、ナチス・ドイツ建設に尽力した。アドルフ・ヒトラーハウスホーファーの思想に影響を受けたため、ドイツ第三帝国の欧州侵攻の理論的バックボーンだったと言われる。生まれたばかりの地政学は、戦争被害者への配慮はなく、加害者意識もリーダーに持たせず、当時のリーダーのむきだしの野心を理論的に補強し戦争へと駆り立てることになる。

 

国民国家が総力戦を生み世界大戦へ

この「国民国家の誕生」がのちの世界大戦の契機となった。国民国家が徴兵制と国家予算を使って「総力戦」という概念を生んだ。そして欧州で生まれた欧州最大の悲劇である第一次世界大戦を生んだ。その第一次世界大戦は、太平洋をまたぐ当時の二つの海洋帝国、日本とアメリカが衝突する運命をも、もたらした。

 

EU誕生

国民国家から国家連合へ

世界で初めて国民国家を誕生させた帝国からどんどん同じ民族で分離独立していったヨーロッパ。そこから世界最大の国家連合が生まれてきたところも興味深い。

 

石炭と鉄鋼が戦争の原因になると考えたヨーロッパは1952年に欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)を発足させた。石炭と鉄鋼を国家間で共有することにより、将来国家間の戦争が起こる可能性を下げようとの狙いだ。のちに誕生したASEANもそうだが、国家間の共同体はまずは安全保障が求心力となる。

 

その後幾多の変遷を経て欧州連合EUとなる。EU域内市場における、人、物、サービスおよび資本の自由な移動を実現した。域内の司法および内政に関する法律を制定し、貿易、農業、漁業および地域開発に関する共通政策を掲げる。