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【本要約】田村耕太郎【地政学が最強の教養である】第7章 日本がやるべきことは

目次

「ジャングルの掟」が支配する時代

「ジャングルの掟」再来だ。著者が政治家になった頃、湾岸戦争多国籍軍が結成され、勝利。アメリカ一強時代、「自由民主主義がこれから世界に広まり、国家による総力戦はなくなる」といった風潮が世界的に高まっていた。

 

国際法と国際機関が世界秩序を形成し、人類の敵はテロ組織と気候変動くらいだとの幻想を世界が持ち始めていた。アメリカの政治経済学者である、フランシス・フクヤマ氏が1992年発刊の著書『歴史の終わり』で示した世界観の始まりだと思っていた。

 

しかし、自由民主主義は思うように世界に広がらなかった。2013年、当時のオバマ大統領は「米国は世界の警察官ではない」と言い切った。

 

世界は「歴史の終わり」の幻想から目覚めた。我々の住む社会はやはり、弱肉強食の法則が支配するジャングルのままなのだ。

 

平和とは均衡状態のこと

ジャングルの掟が支配する世界で、平和という状態は力の均衡状態でしかない。このことを我々は再認識しなければならない。

 

地政学を学ぶべき理由

テクノロジーも政治体制も社会を変えるが、変わらないのは地理的条件だけだ。国は引っ越せない。著者は21世紀初頭に民間人から政治家にならせていただいて、国の重要性にも気がついたという。もちろん、国が重要だと思ったから政治家を志したそうだが、それ以上に国は意思決定の単位として重要だと思ったそう。

 

地理が国家を規定する

地政学とは、明確な定義があるわけでもない。古代中国では風水と言われてきたものがそれに該当するとも言われる。地理と政治を掛け合わせた造語、ジオポリティックスは19世紀終わりごろから欧州で生まれたものだ、定義は時代と場所によって様々だが、要は「国家は重要な存在で、地理的条件に国家の命運は左右される」という考えだ。

 

もちろん、国家の相対的な重要性は低下している。人は仕事や教育を大きな理由に国家をまたぐ。Web3は国家とは別のエコシステムを作り上げていくだろう。

 

しかし、国家という概念は簡単になくならないだろう。

 

著者が、アジアに限定して地政学を学んでもらうプログラムを始めたのは、日本ほど、アジアにありながらアジアを知らない国はないのではないかと思ったからである。

 

ただ、一番の理由は地政学を学べば学ぶほど、巨大なユーラシア大陸の東の端のアジアには「ジャングルの掟」しかないと思えてしまう危機感である。

 

これは我々の生活に直結する。残念ながら、たくさんの条件に恵まれてきた我が国日本も、ジャングルの掟が重きを増す現代に国力を落とし続けている。

 

国力を落とせば、ユーラシアのランドパワーに囲まれる我が国の地理的条件からして、深刻な安全保障問題に直結するのだ。

 

今だからこそ、日本のビジネスリーダーたちに「ジャングルの掟」を学んでほしいと著者は考える。

 

リー・クワンユー氏からの助言

ジャングルの掟が支配するこれからの社会は、私たち日本人の生活やビジネスにも直結する。そもそも私たち日本人は戦後、アメリカという超大国に守られてきたこと、侵略されにくい島国という地政学的な利点もあり、安全保障を特に気にすることがなかった。

 

しかし、前述のごとく、ジャングルの掟は健在なのだ。間違いなく日本は淘汰される。このまま国力を低下させれば、日本の豊かさも安全も危ういのだ。

 

著者はこれまで3度、リー・クワンユーさんに個人的に会う機会があったそう。その3度同じ言葉をいただいたという。その言葉をここに紹介したい。

 

「日本のリーダーは"危機待ち"だ。優秀な人間ほど"危機が来れば自分の出番だ"と思っている。自ら波風を立てるのは嫌い、おぜん立てを待っているのだ。国民や同僚政治家の目が覚めたところで自分が動き出そうと思っている。それは間違いだ。真の危機が来たときはもっと何もできない。国民も同僚政治家も危機が起こっていることについて違う理由を見つけてしまうのだ。それは往々にしてやるべき改革を抹殺するようなものだ。その時にはリソースもオプションもなくなっているのだ」

 

最後、彼は、

 

「好調な時にこそ、国民や自分たちに痛みのあることをあえてやらないといけない。そのタイミングは今しかないよ」