「技術的に正しいことを書いているはずなのに、なぜか『わかりにくい』と言われてしまう…」 「レビューで何度も差し戻しを食らって、ドキュメント作成が憂鬱だ…」
多くのエンジニアが、このような悩みを抱えているのではないでしょうか。
仕事の文章は、「情報が間違っていない」ことは大前提です。その上で、読み手に内容がスムーズに伝わり、次のアクションにつながることが重要です。しかし、知らず知らずのうちに、私たちは「伝わらない文章」を書いてしまいがちです。
この記事では、技術者が陥りやすい3つの「罠」と、明日からすぐに実践できる改善策をご紹介します。
罠1:一文が長く、情報が多すぎる
「情報は、多ければ多いほど良い」と思っていませんか? 自分の知識を示すために、つい多くの情報を詰め込んでしまうのは、エンジニアによくある傾向です。
しかし、これは大きな誤解です。一文が長すぎたり、一つの文に多くの情報を詰め込みすぎたりすると、読み手は本当に重要な点が何なのかを理解するために、余計な負担を強いられます。
【改善策】「一文一義」を徹底する
一つの文には、一つの情報だけを込める「一文一義」を心がけましょう。文が短くなるだけで、驚くほど文章は明快になります。伝えたいことが多い場合は、複数の文に分け、接続詞を効果的に使って文と文の関係性を示しましょう。
罠2:読み手を意識せず、自分視点で書いている
あなたは文章を書くとき、「誰に、どのような行動をしてほしいのか」を明確に意識していますか?
多くの場合、私たちは目の前の資料とパソコン画面だけに向き合い、読み手の存在を忘れてしまいます。その結果、新しい技術の素晴らしさや、その実装の詳細といった「書き手が伝えたいこと」ばかりを書いてしまいがちです。
しかし、読み手が本当に知りたいのは、「その技術によって、自分のビジネスにどんなメリットがあるのか」「自分の課題がどう解決されるのか」です。この「書き手の論理」と「読み手の論理」のズレが、「伝わらない」を生む最大の原因です。
【改善策】書く前に「読み手」と「目的」を定義する
文章を書き始める前に、一度立ち止まって自問してみましょう。 * この文章の読み手は誰か? (例:後輩のエンジニア、他部署の企画担当者、お客様) * 読み手に、何を理解してほしいのか? * 読み手に、どう行動してほしいのか? (例:この仕様で実装してほしい、予算を承認してほしい)
ターゲットとなる読み手を具体的に設定し、その人の視点に立って情報の筋道を整理し直すだけで、文章の説得力は劇的に向上します。
罠3:基本的なライティング技術を学んでいない
ほとんどのエンジニアは、技術文書の書き方を体系的に学んだことがありません。国語の授業で書いた感想文と、ビジネスで求められる「相手を動かすための文章」は、目的も手法も全く異なります。
自己流の書き方では、どうしても「伝わらない文章」から抜け出せません。
【改善策】「ロジカルライティング」と「テクニカルライティング」の基礎を知る
専門的な内容を、正確かつ分かりやすく伝えるための情報整理の技術が「テクニカルライティング」。そして、その情報を相手に納得してもらえるように筋道を立てて構成する技術が「ロジカルライティング」です。
これらの技術を学ぶことで、自己流から脱却し、誰が読んでも分かりやすい文章を書くための「型」を身につけることができます。
まとめ:書く技術は、あなたを次のステージへ導く
文章をわかりやすく書くスキルは、あなたの評価に直結します。報告書や技術ドキュメントは、あなた自身の仕事ぶりを上司や周囲に示す重要な資料です。
さらに、明快なドキュメントはチーム全体のコミュニケーションを円滑にし、組織の生産性を向上させます。
今日から、3つの改善策を少しずつ意識してみてください。ライティングスキルは、あなたのキャリアを加速させる、強力な武器になるはずです。