目次
14.6.2 真空期待値とO(2)対称性の自発的破れ
ここでは、(14.44)のラグランジアン密度における真空期待値について、古典近似の範囲内で考察する。
(14.44)からポテンシャルは、
で与えられる。このポテンシャルはワインボトル型となる。ワインボトルと右のミクロマンを(水平面内で)結ぶ方向が、それと直交する方向がに対応し、縦軸がの値を表す。原点は山の頂上に対応し、不安定点である。ポテンシャルの最小値は、(14.47)右辺の表式から、がを取るときに実現され、ワインボトルの谷底を一周ぐるっと回る円周上では同じ値を取る。そこで、の真空期待値として(14.48)の値を与える状態をとしておく。すなわち、である。<check 14.9>
14.4節の議論を用いて、(14.49)の真空期待値は対称性の自発的破れを引き起こすことを示してみよう。
【ヒント】(14.45)でとおいて、無限小変換:を導き、(14.49)の真空期待値はを与えることを示せばよい。
(14.49)の状態は、によらずポテンシャルの値は同じなので、エネルギー的に縮退している。そのため、真空状態に対する次の素朴な疑問が生じる。すなわち、の値を1つ決めてを真空状態に選んでよいのか?それとも、より一般的に異なるの状態を重ね合わせたものを真空状態に選ぶべきか?
幸いなことに、空間の体積が無限大の極限で
を示すことができる。また、に任意の演算子を作用させて作られた状態も、(の極限で)と直交する。つまり、を1つ自由に選んで、を真空状態として構わないということだ。なぜなら、は、から構成されるすべての状態と直交するからだ。また、どのを選んでも物理的に等価なので、好きなの値を選んで構わない。ここでは真空状態としてに選ぶ。すなわち、
である。