目次
次節で対称性の自発的破れの指標を与える。そこでは保存量が中心的役割を果たす。次節の準備として、この節では保存量のもつもう1つの役割―無限小変換の生成子―について議論する。
14.3.1 無限小変換の生成子としての保存量
無限小変換
のもとで作用積分が不変とする。ここでは無限小パラメータである。このとき、ネーターの定理から保存量が存在し、ハイゼンベルグ方程式を用いると次式が成り立つ。
ここではハミルトニアンである。
保存量は、もう1つの重要な役割を担う。それはが無限小変換(14.5)の生成子、すなわち、関係
を満たすことである。
<check 14.2>
交換関係は、が保存量()であることを意味するが、(14.7)の関係からもう1つ別の意味をもつ。のもう1つの物理的意味を説明してみよう。
【ヒント】(14.7)から、と書き表すことができる。
(14.7)は無限小変換に対応するが、(がエルミート演算子の場合)有限変換は次のユニタリー変換で与えられる。
ここで、は有限の実パラメータとしてよい。を無限小に取れば、(14.8)は(14.7)に帰着する。
保存量の具体例を見るために、無限小時空並進()
を考えてみよう。時空並進対称性のもとでの保存量はエネルギー運動量である。(14.5)と(14.9)を見比べると、の関係が成り立つ。したがって、(14.7)からは
を満たす。この関係をユニタリー変換(14.8)を使って表すと
となる。ここで(14.11)は、有限のに対して成り立つことに注意しておく。
<check 14.3>
有限変換(14.11)を無限小変換の繰り返しによって導くことができる。次の(14.12)の各行の式の意味を説明してみよう。
次に、ローレンツ変換
のもとでの不変性を考える。無限小変換の場合はとおくと、無限小パラメータには、の添え字に関して反対称の条件がつく。(<check 14.4>参照。)この時の保存量は、無限小ローレンツ変換の生成子で、は平面内の角運動量演算子、は方向のブースト演算子である。をスカラー、スピノル、ベクトル場としておく。ここで、はスピノルの添字、はベクトルの添字である。それぞれの場に対するローレンツ変換性は
で与えられる。ここで、はスピノルおよびベクトルに対するローレンツ変換のパラメータである。無限小変換の場合、
で与えられる。(14.11)および(14.15)の変換性は、場の真空期待値に対して強い制限を与えることが後の14.3.3項で明らかになる。<check 14.4>
無限小ローレンツ変換の場合、の条件から(14.14)を導いてみよう。また、ととの交換関係は、(14.15)と(14.16)を使ってで与えられることを説明してみよう。
【ヒント】(14.15)でが無限小の場合を考えればよい。