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【本要約】大栗博司【強い力と弱い力 ヒッグス粒子が宇宙にかけた魔法を解く】第4章 神様は左利きだった―弱い力のひねくれた性質

目次

強い力と弱い力の関係は「美女と野獣

強い力と弱い力の関係は、美女と野獣の関係に似ていると思います。

 

ヤン-ミルズ理論は、マクスウェルの電磁気理論とアインシュタインの一般相対論の数学的構造を受け継いでおり、その美しさは物理学者や数学者の目には明らかです。

 

このヤン-ミルズ理論をそのまま使って説明される強い力には、その美しさがそのまま表現されています。

 

これに対し、弱い力の美しさは、長い間明らかになりませんでした。そして、弱い力を野獣の姿に変え、その美しさを隠していたのが、ヒッグス場だったのです。

 

しかし、ヒッグス場の魔法を解くのは、次章以降までお待ちください。この章では、魔法が解ける前の弱い力の姿を、ありのままに見ていただきます。

 

原子核の中ではエネルギー保存則が成り立たない?

原子核が、電子(ベータ線)を放出する現象を「ベータ崩壊」と呼びます。

 

ベータ崩壊が起きる理由は、セシウム原子核の中に中性子が多すぎて、陽子とのつりあいが悪いからです。そこで、その中の一つの中性子が弱い力で陽子に変身し、そのときに電子を放出します。

 

しかし、ベータ崩壊で放出される電子の運動エネルギーを測定したところ、重大な問題が見つかりました。

 

そもそも、電子が原子核から高いエネルギーで放出されるのは、反応前の原子核の質量が、反応後の原子核と放出された電子の質量を足したものよりも大きいからです。アインシュタインの公式「 E=mc^2」によれば、この質量の差はエネルギーに転化されるはずです。

 

ところが、放出された電子の運動エネルギーを実際に測ってみると、このエネルギーの差より小さいことがわかりました。エネルギーの帳尻が合わないのです。