【サピエンス全史 上下合本版 文明の構造と人類の幸福】第1章 唯一生き延びた人類種 その3 調理をする動物
調理をする動物
頂点への道のりにおける重大な一歩は、火を手懐けたことだった。人類は今や。頼りになる光と暖かさの源泉と、餌食を求めてうろつくライオンたちに対する恐ろしい武器を同時に手に入れたのだ。
だが、火の最大の恩恵は、調理が可能になったことだ。
調理をするようになったおかげで、人類は前よりも多くの種類の食物を食べたり、食事にかける時間を減らしたりでき、小さな歯と短い腸で事足りるようになった。調理によって腸を短くし、そのエネルギー消費を減らせたので、図らずもネアンデルタール人とサピエンスの前には、脳を巨大化させる道が開けた。
火によって、人類と他の動物との間に、最初の重大な隔たりももたらされた。ほぼすべての動物の力は、筋肉の強さや歯の大きさ、翼の幅など、自らの身体を拠り所にしている。
人類は火を手懐けたとき、従順で潜在的に無限の力が制御できるようになった。そして、これがいちばん重要なのだが、火の力は、人体の形状や構造、強さによって制限されてはいなかった。