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【サピエンス全史 上下合本版 文明の構造と人類の幸福】第1章 唯一生き延びた人類種 その1 不面目な秘密

不面目な秘密

ホモ・サピエンスは、さらに不穏な秘密を隠してきた。私たちには野蛮ないとこたちが大勢いるばかりでなく、かつては多くの兄弟姉妹もいたのだ。本章の最後で見るように、そう遠くない将来、私たちは再び、サピエンスでない人類と競い合う羽目になるかもしれない。


太古の人類の一部が故郷の東アフリカを離れて北アフリカ、ヨーロッパ、アジアの広い範囲に進出し、住み着いた。


ヨーロッパとアジア西部の人類は、ホモ・ネアンデルターレンシスで、一般にはたんに「ネアンデルタール人」と呼ばれている。アジアのもっと東側に住んでいたのがホモ・エレクトスで、そこで200万年近く生き延びた。これほど長く存在した人類種は他になく、この記録は私たちの種にさえ破れそうにない。


インドネシアの島の一つで、フローレスという比較的小さな島では、太古の人類は矮小化(小型化)した。学者の間ではホモ・フローレシエンシスという名で知られるこの特殊な種は、身長が最大で1メートル、体重がせいぜい25キログラムだった。とはいえ彼らは石器を作ることができ、島に住むゾウをときおりかることさえやってのけた。ただし、公平を期するために言い添えると、ゾウたちもまた小型化した、矮性種だった。


他の洞窟や島、地域で発見される日を待っている私たちの失われた親戚たちが、あとどれほど多くいるか知れない。


これまで挙げた人類は、ヨーロッパとアジアで進化していたが、東アフリカでも進化は止まらなかった。この人類の揺りかごは、ホモ・ルドルフェンシスやホモ・エルガステル、そしてついには、自らを厚かましくもホモ・サピエンス(「賢いヒト」の意)と名づけた私たち自身の種など、無数の新しい種を育み続けた。


複数の種が存在した過去ではなく、私たちしかいない現在が特異なのであり、ことによると、私たちが犯した罪の証なのかもしれない。ほどなく見るように、私たちサピエンスには、自らの兄弟たちの記憶を抑え込むだけの十分な理由があるからだ。