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【読書メモ】【教養としての社会保障】第1章【系譜、理念、制度の体系】ギルドの互助制度を手本としたビスマルク

(1) 社会保障の系譜 —— 近代産業社会とともに生まれ、それを支えてきた社会保障制度

近代以前の社会にも救貧という考え方はありましたし、実際この種の救貧や施しのような行為はいつの時代にもどの国でも統治者は行なっていました。では、現代の社会保障はこれらといったい何が違うのでしょうか。

近代社会保障の始まりはビスマルク

社会保障の中心的な仕組みである社会保険制度は、19世紀ドイツの政治家、ビスマルクがつくったのが始まりと言われています。社会保険の原型はギルドの互助制度(養老制度)と言われています。


国家が担う制度としての社会保障は、産業革命を契機に生まれたとされています。


社会保障の考え方が生まれた背景には、マルクスエンゲルスが唱えた社会主義思想の登場もあります。


社会保障が国家の機能として普遍的に位置づけられていくのは、第二次世界大戦後です。


(2) 福祉国家の理念

民生の安定を図る

民生の安定とは、国民の生活・生計の安定を守る、ということで、人々が生活に困ることなく安んじて生活できるようにする、ということです。


当然のことですが、労働者は生きた人間です。使い捨てにするようなことをしていると、労働力はすぐに枯渇してしまいます。それでは社会は持続できません。


後の章でも述べますが、自由競争・市場競争にもルールが必要で、神の見えざる手が機能するためには、資本主義そのもののロジックからは生まれてこない、社会の構成員=競争に参加する者を律する行為規範が必要だということです。


近代資本主義と民主主義という枠組みの中で、社会の安定がなければ資本主義も成長していかない、持続できない、という考えから、第二次世界大戦後に福祉国家の理念の下に生まれたのが現代の社会保障です。

社会の発展を支える

社会保障のもう一つの機能は、民生の安定の延長線上にあります。社会の分裂を防ぎ、それを通じて社会の発展を支える機能です。

相互扶助の機能を代替する

産業革命によって、工場には大量の工場労働者が必要になりました。そこで、大量の農民を労働者として地域社会から都市に持ってきたわけです。結果として、多くの人々が、農村社会が持っていたインフォーマルな相互扶助のシステムから切り離されました。

(3) 社会保障は壮大な制度の体系である

(4) 社会保障の理解の難しさ —— ミクロの風景とマクロの風景の違い

社会保障は政治、経済、家族政策と不可分

ですから、社会保障全般を正しく理解するには、社会保障そのものだけではなく、経済システムや政治、社会全体についての一定の理解が必須だということになるのです。

自分には関係ない?

制度の全体像=マクロの風景と、市民一人ひとりにとってのミクロの風景が、もの凄く乖離している。そこに難しさがあります。

(5) 合理的無知と公教育の欠陥

社会保障がなかなか理解されない理由について、もう二つの点を指摘したいと思います。

無知のままでいる、という選択

人間の思考能力やそのキャパシティはどれほど大きくないから、自分にとってさほど重要ではないことについては、合理的な選択として無知であることを選択するという傾向がある。

教育が果たすべき役割

その国をつくっている根本の価値観や理念、哲学が分からなければ、社会保障の制度だけ教えても、その意味するところ、本質は理解できない。残念ながら日本の教育はそこのところをきちんと教えていないように思います。