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【具体例から学ぶ多様体】4.1 同相写像

4 楕円 E

第4章では、まず、同相写像という概念を通して、単位円 S^1と楕円 Eは位相的観点からは同じものであることを示し、一方、等長写像という概念を通して、これらは一般に等長的ではないことを述べる*1。また、数学のさまざまな場面で現れる基本的な代数的概念の1つである群について簡単に述べ、特に、ユークリッド空間 \mathbf{R}^nのアファイン変換群、等長変換群について詳しく調べる*2

4.1 同相写像

 a, b>0を固定しておき、単位円 S^1から平面 \mathbf{R}^2への連続写像 f : S^1\to\mathbf{R}^2


 f(x, y)=(ax, by)\qquad (\left(x, y\right)\in S^1)\tag{4.1}

により定める。 E=f(S^1)とおくと、


 \displaystyle E=\left\{(x, y)\in\mathbf{R}^2\middle|\frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2}=1\right\}\tag{4.2}

であり、 E楕円を表す(図4.1)。


 f S^1から Eへの全単射を定め、この全単射を同じ記号 fで表すと、逆写像 f^{-1} : E\to S^1


 \displaystyle f^{-1}(x, y) = \left(\frac{x}{a}, \frac{y}{b}\right)\qquad(\left(x, y\right)\in E)\tag{4.3}
により与えられる連続写像である。


次の定義4.1より、(4.1)の f S^1から Eへの同相写像を定める。よって、位相的観点からは、単位円と楕円は同じものであるとみなすことができる


定義4.1 位相空間 (X_1, \mathfrak{D}_1), (X_2, \mathfrak{D}_2)に対して、全単射連続写像 f: X_1\to X_2が存在し、逆写像 f^{-1}も連続なとき、 f同相写像という。同相写像 f : X_1\to X_2が存在するとき、 X_1 X_2同相である、または位相同型であるという。


例題4.2  \mathbf{R} \mathbf{R}^2は同相ではないことを示せ*3


補足4.3 実は位相幾何に関する知識を用いることにより、 m, n\in\mathbf{N}に対して、


 \mathbf{R}^mと\mathbf{R}^nは同相である\Longleftrightarrow m = n\tag{4.4}

を示すことができる*4

*1: E多様体になることについては問題9.2で述べる。

*2:群論については、例えば、堀田良之,『代数入門―群と加群―』, 裳華房(1987年)を見よ。

*3:下波線が途切れてしまうが、解消方法がわからない。。

*4:例えば、坪井俊,『幾何学Ⅱ ホモロジー入門』, 東京大学出版会(2016年)p.60, 問題2.2.3を見よ