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【論文和訳】Sabrina Pasterski【Lectures on Celestial Amplitudes】1 Introduction2

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目次

散乱の新たな枠組み

天球ホログラフィプログラムは、宇宙定数(cosmological constant)がゼロの時空にホログラフィック原理を適用しようとする試みである。一方、これはAdS/CFTの成功が動機となっている。実際このような双対性を適用することで、量子重力に関する非摂動的な問題に答え、トップダウンで天球共形場理論(celestial CFTs)の弦理論的構築をすることが究極の目標である。しかし、これはまた散乱振幅や初期の \mathcal S行列プログラムをCFTにヒントを得たものと見ることもできる。つまり、一貫した(consistent)天球共形場理論の本質的な記述があれば、CFTブートストラップ(CFT-bootstrap)を使い、散乱の計算や制約をすることができる。


研究の中心的対象は \mathcal S行列である。利点としては、対称性が中心なだけでなく無限次元である記述を、ボトムアップで構築していることである。この分野のきっかけとなったのは、場の量子論におけるソフト定理は漸近的対称性に対するウォード恒等式の現れであるという、ストロミンジャーの鋭い観察であった。さらに美しいことに、これらの漸近的対称性の生成子がそれより2次元低い、天球上のカレントのように見えた。漸近的Virasoro対称性に対応するサブリーディングソフト重力子定理(The subleading soft
graviton theorem)はストレステンソルの候補にさえなっていた。しかし、共形ウォード恒等式が標準的な形になるためには、運動量からブースト固有値(boost eigenstates)に変更する必要がある。この話は第3節の焦点となり、第4節でホログラフィック対応へと導く。


 \mathcal S行列はすでに、バルク内の物理を研究するためにオンシェルのデータに依存した対象を使えるやり方を通してホログラフィックである。外へ向かう一粒子状態と天球CFTにおける(準)プライマリ演算子の間の辞書は、単に基底の変換を実装した、外へ向かうオンシェル状態への積分変換

 \displaystyle 
_{\mathrm{boost}}\langle out | \mathcal{S} | in \rangle_{\mathrm{boost}} = \langle\mathcal{O}^{\pm}_{\Delta_1, J_1}(z_1,\overline{z}_1)\cdots\mathcal{O}^{\pm}_{\Delta_1, J_1}(z_n,\overline{z}_n)\rangle_{\mathrm{CCFT}}
\tag{1.1}
である。ここで、上付きの \pmは入ってくる状態、出ていく状態に対応する演算子を表す。この再構成は興味深い意味を持つ。第4節では、天球カレントが現れる共形次元の特別な値での極へ、異なるオーダーでの \omega\to 0のソフト極限をどのように解決するかに焦点を当てる。また、共線的極限(collinear limits)がこの設定において基本的な役割を果たし、その結果対称性によって強く制限されるCCFTの演算子積展開(OPE)のデータを与える。さらに、天球振幅はすべてのエネルギースケールで散乱を調べる。これは標準的なウィルソンのパラダイム(Wilsonian paradigm)を覆し、紫外発散を制限しようとする興味深い道筋を与えてくれる事実である。


最後に、天球ホログラフィ―における活発な研究分野を調査し、私たちが使用・開発しているツールがどのように隣接する分野と結びついているかを紹介する。天球振幅の研究を始める前に、このテーマで役に立つ他の教育的な参考文献を紹介しておく。赤外領域での物理がどのように天球ホログラフィ―につながるかについての最近のレビューは[19-21]を参照。レビュー[5, 22-25]は、私たちがここで使う対称性、一般相対性理論、散乱振幅の技術についてより深くカバーしている。