目次
1 導入
エントロピーが領域の体積としてスケールするバルク揺らぎモードは、高温では常に支配的である。また、バルク部には、地平線の面積に比例した寄与と、地平線の近くで高度にカーブした時空に起因する対数補正が含まれる。温度が下がると、主にエッジ残留(edge residual)自由度の揺らぎモードとウィルソンラインが見られるようになる。これらのモードのエントロピーは、境界の面積に温度の2乗を掛けたものとしてスケールする。超低温では、 にモードの局在が見られる。経路積分を行うと、これらのモードの対応するエントロピーは、地平線面積をプランク長の2乗で割った値としてスケールする。境界を伸ばしたウィルソンラインの定常モードとトポロジカルモードは、超低温でのエントロピーに対数的な補正を与える。そのため、超低温での面積寄与+対数補正も得られる。
さて、Bekenstein-Hawking的なエントロピーと対数補正は、2つの異なるところから来ることがわかった。最初の寄与はバルクの揺らぎモードによるもので、「レンガの壁」モデル[10]で見られるエントロピーと一致する。それらの自由度は、地平線のすぐ近くに住んでいる自由度に相当する。第二の寄与は、の縦運動量ゼロモードと境界の伸びるウィルソン線 が、の位相空間に局在し、そのエントロピーがゼロ点エネルギーに由来するためである。これらのモードは地平線付近の真空の縮退に対応し、対称性の破れたパターンで説明することができる。なお、超低温で揺らぎモードが消滅することはよく研究されているので [52, 53]、今回の論文で議論されているゼロ点エネルギーのように、極限ブラックホールエントロピーが別のメカニズムから来るというのは、妥当な逃げ道である。