なぜ思考力が重要なのか —— 知的能力を構成する要素
VUCA時代に求められる力
ビジネスにおける「心」「技」「体」とは何か。
まずはわかりやすい「体」からです。基本中の基本として、普段は意識していませんが「失ったときにその価値を痛感する」のが健康です。
次に「心」ですが、ベースとなっているのは健全な精神です。それに加えてモチベーション、誠実さ、さらには自ら積極的に動ける能動性なども「心」に入ることになるでしょう。
そして最後に残るのが「技」の部分です。「心」と「体」以外の、主に知的能力、いわゆる「頭を使って」発揮する能力がこの「技」の部分であると定義しておきます。
それでは人間の知的能力はどのような構成要素から成り立っているのでしょうか?
ここでは著者の定義する3つの要素を抽出しておきます。
それが「知識力」「対人感性力」そして本書のテーマである「思考力」です。
これらの3つの知的能力は、ビジネスにおけるさまざまな実務を行う上でいずれも必須のものとなります。中でも思考力の重要性が、現在のVUCAと呼ばれる変化が激しく先が読めない時代に相対的に上がってきています。
思考力は「自分なりのもの」を生み出す能力
VUCAの時代におけるこれら3つの能力を具体的に考えてみましょう。まず対人感性力ですが、これは人の気持ちを理解するスキルです。
続いて知識力ですが、ここでは個人が持つ知識の質と量、と定義します。ただ、知識というのは過去に(自分自身を含む)「誰かがやったこと」や誰かがまとめて形に残したものであり、いずれにしろ「過去の集大成」と言うことができます。
これに対して思考力は、新しいものや自分なりのもの、あるいはビジネスであれば他社との差別化を図るためのもの、つまり「違うもの」を生み出すための能力であり、それは変化が激しいときに特に重要な能力になるのです。