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【読書メモ】【コンサルを超える問題解決と価値創造の全技法】第一章 問題解決力

ビジネススクールでは学べない」知の原点

「はじめに」で、コンサルタントというのは基本的に、問題解決をする人だと定義した。

最初に、「問題解決」は、ビジネススクールでは教えていない、というのをご存じだろうか?

「問題解決」は、いわば総合芸術のようなものだ。

さらに、「問題解決」というのは、アカデミックに解くというより、実践で解くものだ。

学者には問題解決は教えられないのである。

マーケティングなり、ファイナンスなり、なんらかの切り口からなら、その分野の専門家がそれなりに方法論を持っている。しかし、実際の問題に、「マーケティング」とか「ファイナンス」とかラベルが貼られているわけではない。

新人コンサルが最初に学ぶ問題解決一週間集中講座

問題解決では、あらゆるものを駆使して、あらゆる角度からロジカルに考える。そして、最後は、論理を超える。

つまり、全体像を見て、バランスをとる。ある種の直観と感性が要求される世界なのだ。

だからといって、問題解決の論理やスキルは身に付けなくてもいいということではまったくない。

だから、マッキンゼーでもボスコンでも、新人はまず、基本的な問題解決手法をたたき込まれる。

しかし、現実のビジネスの課題に、たったひとつの正解があるわけではない。

「問題解決」の二大要素分析力と構築力

先に、問題解決は総合芸術だと述べた。そこにはさまざまな要素があり、さまざまな能力が求められる。大別すれば、「分析力」と「構築力」だ。

丸ごとでは処理できない課題を、どんどん要素分解していくことによって、問題の本質に迫っていく。

しかし、こうした「分析」は、問題解決の半分でしかない。

問題がそこにあるということをロジカルに証明するだけでは何の解決にもならないのである。

実際、企業の問題は、生物同様、外科的に問題の箇所を取り除けばいい、というものではない場合がほとんどだ。あるいは、問題だと思っていたのは、本当は問題ではなくて、それを生み出す根本的な問題があり、すぐに再発する、ということもある。

要するに、ひとつのことが悪さをしているというより、複雑骨折しているようなものなのだ。

では、どうするか?ということで、次の「構築力」が重要になってくる。

真理より心理

分析によって、組織の問題がある程度特定でき、それを解消する方法を決定したとする。もっとも重要なのは、ここからだ。「実行」の段階だ。いわゆる「戦略より実行」の世界だ。この段階での最大の障害は何か?

それは極めて人間的なものだ。問題の特定はAIにも可能な「自然科学」の世界だが、その先は「心理学」の領域だ。

人体同様、企業組織は周りの細胞との関連を見、全体のバランスを見ながら、いわば漢方的に全体を直していかなければならない。全員が力を合わせて、現状を打破しようという意思を持つためのストーリーが不可欠である。

何をどういう順番で解いていったらいいか、誰をどういう役割で巻き込むべきかなどを構想する「構築力」が必要となるのだ。そして、そこで用いるのはロジックよりも心理学なのである。

ロジックだけではなくて、ひとりひとりの意思に訴え、感情に訴え、動機づけていくことが必要なのだ。

正論を正論だからと振りかざしたところで始まらないのである。

じつのところ、ロジカルに出てくる答えは、ひとつとは限らない。未来が100%完全には予測できない以上、答えはいくつもある。
ここで重要なのは、最も正しい答えを出すことではなくて、答えを当事者たちに信じさせること、そして、実行させることだ。

ファクトベースのマッキンゼーと心理学重視のボスコン

マッキンゼーの特徴は、ファクトベース。
「ファクトベース、一プロジェクト三か月、調査し、分析し、戦略を立てて終了」が、マッキンゼーの定番メニューである。

問題は、本来、総合芸術である問題解決がただの分析にとどまりがちだということだ。
著者には、本来、ただの前提でしかなかったロジカル・シンキングがすべてのようになってしまっているように見えてるそう。

ボスコンは、一プロジェクトに三年はかけることもざらである。
担当コンサルタントは、クライアント企業の社内に入り込み、問題解決への道のりを手取り足取り、社員とともに試行錯誤しながら伴走する。

課題の分析と問題の特定までの手法は変わらない

では、両社に「変わらない本質」とは何か?それは、企業の「本当の課題」の在りかをえぐり出すことがコンサル前半の勝負である、という点だ。

コンサルは、当初クライアント企業が解決を相談してきた問題以外のところにこそ、本当の問題がある、という仮説のもとに分析する。

したがって、クライアントから解決を依頼された「問題」の答えをいきなり出そうとしないで、「本当の問題は何だろう?」とつねに考え直す。

最初に答えを示すマッキンゼー流と、相手に答えを気づかせるボスコン流

出した解に対するクライアントの「腹落ち」をいかに導いていくかが極めて重要で、そこが「心理学」なのである。
では、それぞれがいかに誘導するか?

マッキンゼーは、最初に答えを言う。本質的な課題をロジカルに示す。

これに対してボスコンは、最初から答えを示すのではなく、相手が自分で気づくように上手に導く。分析の結果の報告・提案も、相手が受け入れやすいような言い方をする。

さて、あなたが経営者だったら、どちらを選ぶか?
ボスコンに対する主要な批判は、相手の身の丈に合わせた問題解決では、相手のポテンシャルをフルに引き出さないままに終わらないか、という点だ。たしかに、どんどん要求水準を上げていかないと、中途半端に七合目程度で終わってしまうことになる。
では、最初から高いハードルを示すマッキンゼーのほうがいいだろうか?というと、それはそれで、示された解決策の一割も実行されないまま終わってしまうことも少なくない現実を見るにつけ、疑問が残る。

三か月で一割をとるか、三年で七割をとるか、の選択と言えるかもしれない。