前講では、「経営戦略とは何か」についてお話ししました。
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しかし、そもそもなぜ経営戦略が必要なのでしょうか?
経営には「合理性」が求められます。勘や思いつきだけでは、成功は覚つきません。こうした理詰めの経営を行うために、経営戦略が必要となるのです。
講義2では、「経営の合理性とは何か」について学びましょう。
なぜ経営戦略が必要なのか
経営戦略は経営の「背骨」ですが、経営はいきなり戦略づくりから始めるものではありません。その出発点は「ビジョン」です。
ビジョンとは、「こういうことをやりたい」「こういう会社をつくりたい」といった「目指すべき将来の姿」のこと。
企業経営においては、そのビジョンという曖昧模糊とした思いを、経営戦略に落とし込むことが不可欠です。
経営とは、理詰めで考え抜いた合理的な経営戦略に基づいて、価値創造を実現する「サイエンス」でもあるのです。
「ゲームのルール」を知る
「ゲームのルール」を理解し、経営の合理性を担保するために、数多くのフレームワークやツールが生み出されてきました。
- 3C分析 —— 企業を取り巻く環境を「Customer(顧客)」「Company(自社)」「Competition(競合)」の「3つのC」に分けて分析するもの。
- SWOT分析 —— 「Strength(強み)」「Weakness(弱み)」「Opportunities(機会)」「Threats(脅威)」の4つの要素を分析・整理して、優位性を構築する上で何が武器となり、何が足りないのかを明らかにします。
- バリューチェーン分析 —— 事業活動を機能ごとに分解して、どの部分に強み・弱みがあるか、どの部分で付加価値が生み出されているかを分析し、事業戦略の妥当性や改善の方向性を探ります。
戦略策定の示唆を得るという観点から見ると、よりパワフルなコンセプトがあります。それは「アドバンテージ・マトリクス」です。
「アドバンテージ・マトリクス」で事業特性を摑む
経営戦略立案において、まず最初に行わなければならないのが、この「アドバンテージ・マトリクス」に基づく分析・考案です。
このコンセプトはそれぞれの事業において、「企業間の格差がどのように表れるか」に着目し、どうすれば優位性を構築しうるかのヒントを得ることができます。
1つは「規模型事業」です。事業の規模が優位性を構築する唯一最大のポイントとなる事業で、規模が大きい企業ほど高い収益を上げることができます。
2つ目は「特化型事業」。優位性を構築する競争要因が多数存在するので、事業規模に関わらず、特定の分野でユニークな地位を築くことによって高収益を上げることが可能です。
3つ目は「分散型事業」。事実上大企業が存在しない業界で、競争要因は多いけれども、圧倒的な優位性を構築するまでには至らない事業です。
4つ目は「手詰まり型事業」です。事業が成熟期から衰退期へと向かい、小規模企業が淘汰され、残った大企業も決定的な優位性を構築できない状態に陥ってしまった業界がこれに当たります。
多くの事業は分散型から始まり、特化型へと変化し、さらに規模型、手詰まり型へと移行していきます。